ニード論(ヴァージニア・ヘンダーソン)

前回はマズローのニード理論についてまとめましたが、 今回はヘンダーソンのニード理論です。

看護の領域ではニード理論というとこっちの方を思い浮かべる人の方が多いのではないでしょうか。

ヴァージニアヘンダーソンは1897年に米国ミズーリ州のカンザスシティ生まれ98歳で他界しました。

8人兄弟の5番目で17歳のときに第一次世界大戦が始まって、兵士の役に立ちたいと看護への道を志し、1918年に陸軍看護学校へ入学したらしいです。

訪問看護師や教員を経験し、1960年『看護の基本となるもの』を出版しました。

この本の7ページに「あらゆる種類のヘルスワーカーの男女構成がもっと等分になる日を歓迎する。」と書いてあります。

ナイチンゲールの『看護覚え書き』から100年経っているだけあって、男性看護師にかなり好意的でいい感じです。

しかも、この本はとても薄くて、最後に要約もついています。

とても読みやすいので、学生時代にサボって読まなかった人はぜひ読んでみてください。

私はちゃんと読んだのは今回が初めてでした(笑)

この本が出た当時は、医療技術の進歩に伴い、多くの医療職者が誕生してチーム医療が展開されつつある時代でした。

看護師はヘルスケアチームの一員として自分たちの独自の機能がどこにあるのか、それを見出しにくい状況におかれ苦しんでいたようです。

そんな状況の中、国際看護師協会(ICN)からの依頼で『看護の基本となるもの』を出版して、看護の定義を世界に向けて発信しました。

これによりたくさんの看護師が自信と勇気をもらったようです。   ヘンダーソンの人間、健康、環境、看護についての概念はこのようなものです。

そして、これが人間の持つ14の基本的ニードです。

基本的ニードは14つで共通ですが、これには考慮しなくてはならないものがあります。

それがニードに影響を及ぼす常在条件とニードを変容させる病理的状態です。

看護はこれらを考慮してニードの充足を図っていくので、対象となる個人の条件に応じて多様に変化させ、工夫して提供されなければなりません。

マズローの欲求階層論ともいわれるニード論と、ヘンダーソンの14の基本的ニードを対比させると、順序性が理解しやすくなります。

ヘンダーソンのニード理論をまとめると、まず14の基本的ニードの充足状況をみます。

健康な方であれば、体力、意思力、知識があるから大丈夫です。

しかし、患者さんはこれらの能力が不足しニードが満たせない状況にあります。

そしてこれには常在条件と病理的状態が影響を与えます。

この未充足なニードをできるだけ早く自立できるように充足することが看護であるといっています。

このような看護を行うにあたり看護師の姿勢としては患者さんの「皮膚の内側に入り込む」必要性があるとヘンダーソンは言っています。

皮膚の内側に入り込むとはすごい表現で、最初はついつい大好きな漫画のこの場面を思い浮かべてしまいましたが、こういうことではありません。

ヘンダーソンはこう言っています。

「看護婦は、他者の欲求を評価する自分の能力には限りがあるという事実を認めねばならない。たとえ非常に緊密な二人の間においても互いを完全に理解するのは不可能である。しかしそうはいうものの、自分が看護している人との間に一体感を感じることが出来るのは、優れた看護婦の特性である。患者の“皮膚の内側に入り込む”看護婦は、傾聴する耳を持っているにちがいない。言葉によらないコミュニケーションを敏感に感じ、また患者が自分の感じていることを色々の方法で表現するのを励ましているにちがいない。患者の言葉、沈黙、表情、動作、こうしたものの意味するところを絶えず分析しているのである。この分析を謙虚に行い、したがって自然で建設的な看護婦=患者関係の形成を妨げないようにするのはひとつの芸術(art)である。」

B’z風に言うと

「たとえばどうにかして君の中に入って行って、その目から僕をのぞいたらいろんなことちょっとはわかるかも。」

今夜月の見える丘に

2回にわたってニード論についてまとめてみました。

実際臨床で使えるかどうかは、それぞれで判断すればいいと思います。

理論を学ぶことは自分の枠を広げ、いろいろな角度から対象がみれるようになる点において有用だと思っています。

50年も前に出た本からも学ぶことがたくさんある。

人間ってすごいですね!

 

よーし、頑張るぞーーー!!
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