以前コミュニケーションについて少し紹介しました。
ICUでは人工呼吸器を使用している患者さんと、うまくコミュニケーションがとれないことがあります。
ICUの看護師が ONE PIECEの見聞色の覇気が使えたら、患者さんの声なき声を聴き、介入につなげることができるはずです。
でも、そんな特殊能力は現実にはないわけです。
ないんですけど、挿管中の患者さんとうまくコミュニケーションをとれる人と、苦手な人がいるのはなぜでしょう?
センスと言ってしまえばそれまでなので、あえてここでは少し頭でっかちに考えてみます。
「困難は分割せよ!」と昔の偉い人が言っています。
私も、何か行動ができなくなった時は、パッキングと分解をイメージします。
「脳はあらゆる作業をパッキングしたがる」らしいです。
先送りせずにすぐやる人に変わる方法 (中経の文庫 さ 17-1)
つまり、細かく小さなことを、脳は一つのまとまった概念として取り扱おうとします。 その方が抽象的に物事を考える時にうまくいきます。
しかし、脳にパッキングされた仕事は、いざそれを実行しようとするときにとても難しく感じるそうです。
これが「すぐできない」原因になる…、わかる気がします。
そこで、パッキングされた仕事は、小さく分解していく。
あえて抽象化した概念を、分解して具体化していくイメージです。
このイメージを意識するようになってから、仕事の仕方が大きく変わったと感じます。 だいぶ話が逸れましたが、困難は分割せよ!
難しいコミュニケーションも、コミュニケーションプロセスを分解して考えてみると解決の糸口が見つかります。
コミュニケーションプロセスモデルを、私なりに解釈して図式化するとこのような感じになります。
メッセージの送り手である患者さんは、考えや感情を共通のシンボルである言語・非言語メッセージに変換(記号化)し、何らかの媒体を通して(チャネル)メッセージを伝えます。
私たちは、受け取った記号を解読し、メッセージの意味を解釈(記号解読)します。解釈するためにはメッセージの内容(コンテンツ)だけでなく、これまでの文脈や背景(コンテクスト)が重要になります。
そして、これらの要素以外にそれぞれのプロセスにおいてコミュニケーションに影響を与える要素(ノイズ)が存在します。
お互いがメッセージの送り手にも受け手にもなり、相互作用関係が形成されます。
少しわかりにくいので、患者Aと医療者Bのコミュニケーションを例に考えてみます。
挿管中のAは喉の渇きを感じ、言葉になる前の形のない感情を工夫して伝えるようとします。
挿管チューブにより言葉が出せないため、身振りと口パクという非言語的メッセージに変換します(記号化)。
Aの身振りや口パクをBは視覚を媒介にして(チャネル)メッセージとして受け取ります。 メッセージを受けたBは、挿管されている状況や口腔内の乾燥、これまでの経験など(コンテクスト)を考え合わせ、送られてきたメッセージ(コンテンツ)から「口渇でつらい」という意図を読み取ります(記号解読)。
せん妄や過鎮静は記号化に影響を与えますし(ノイズ)、言葉が出せないことや、筋力の低下はチャネルに影響を与えます(ノイズ)。
医療者側の先入観や時間がない状況は記号解読に影響を与えます(ノイズ)。 このように考えると、コミュニケーションを改善する視点としては、
①患者が考えや感情を記号化できるか
②患者が記号化したメッセージを発信できるか
③医療者が受信した記号を解釈できるか がありそうですね。
同じ困難な状況でも、見え方が少し変わってきませんか? 見え方が変わると、行動が変わります。 少しでも、ヒントになったら幸いです。
今回の内容は、呼吸器ケア10月号に一部執筆させていただきました。
ご興味があればそちらも読んでみてください。
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