今回は、ショックの勉強から少し離れて、夜勤と睡眠について考えてみたいと思います。

夜勤が思っていたよりつらいです。勤務中は眠いのに、帰宅するとあまり眠れません。疲れもなかなか取れなくて……

分かるよ。私も夜勤を始めたころは、身体のリズムをつかむまで大変だったなあ…
坂コー、その辺なんか知ってる?

夜勤は、身体が本来眠ろうとしている時間に働いて、活動しようとしている昼間に眠る勤務だからね。つらく感じるのは無理もないことなんだ。ちょっと調べてみるね!
夜勤明けに疲れているのに眠れない。
眠っても、数時間で目が覚めてしまう。
そんな状態が続くと、
「夜勤に向いていないのかな」
「自分の体力や根性が足りないのかな」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、夜勤がつらいのは、本人の努力が足りないからとは限りません。
夜勤がつらいのは、根性不足だからではありません。
身体のリズムと異なる時間に働いていることが、大きく関係しています。
夜勤がつらいのには理由がある
私たちの眠気には、大きく2つの仕組みが関係しています。
一つは、起きている時間が長くなるほど眠気がたまる「睡眠圧」。
もう一つは、約24時間の周期で、眠りやすい時間と活動しやすい時間をつくる「概日リズム」、いわゆる体内時計です。
夜勤では、身体が眠ろうとしている夜間に働き、身体が活動しようとしている昼間に眠らなければなりません。
夜勤明けに疲れているのに、思ったほど長く眠れないのも、この身体の仕組みが関係しています。
NIOSHの看護師向け夜勤対策
米国の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、看護師と看護管理者に向けて、「Training for Nurses on Shift Work and Long Work Hours」というオンライン教材を公開しています。
この教材では、交代勤務や長時間勤務による疲労について、睡眠や概日リズムの仕組みから、具体的な対策まで解説しています。
夜勤への対策として紹介されている主な内容には、次のようなものがあります。
- 夜勤前に可能な範囲で睡眠や仮眠を取る
- 勤務中に計画的な仮眠を活用する
- カフェインを摂取する量と時間を考える
- 帰宅後に眠る場合は、できるだけ早く休む
- 寝室を暗く、静かで快適な環境にする
- 家族や同居者に睡眠時間を伝える
- 強い眠気があるときは運転しない
ただし、米国と日本では、勤務時間、仮眠制度、通勤方法などが異なります。
すべてをそのまま実践するのではなく、自分の勤務や生活に合わせて考える必要があります。
仮眠は重要な疲労対策
NIOSHは、勤務体制が許せば、計画的な仮眠を重要な疲労対策として位置づけています。
一方、仮眠から目覚めた直後には、頭がぼんやりする「睡眠慣性」が生じることがあります。
仮眠から起きて、すぐに複雑な判断や処置へ入ることには注意が必要です。

仮眠できる日は、短い時間でも横になるようにしているよ。起きた直後は少しぼんやりするから、顔を洗ったり、患者さんの情報を確認し直したりしてから動くようにしているかな
カフェインは飲む時間を考える
カフェインは、夜勤中の眠気を一時的に軽減する可能性があります。
しかし、夜勤の後半や帰宅前に摂取すると、帰宅後の睡眠を妨げることがあります。
量だけでなく、
「この後、何時ごろ眠りたいのか」
を考えて摂取することが大切です。
日本のICU看護師を調べた研究
日本でも、ICUで交替制勤務に従事する看護師の睡眠を調べた研究があります。
岩崎ら(2023)は、ICU看護師22人を対象に、
- 休日
- 日勤日
- 夜勤入り日
- 夜勤明け日
- その後の休日
という5日間の生活行動と睡眠を調査しました。
その結果、夜勤明け日の夜間睡眠について、睡眠効率が比較的良好だった看護師は、夜勤後の朝食に相当する食事を午前中に取る傾向がありました。
また、午前中に自然光を浴びる時刻など、概日リズムに関係する生活行動の時間を調整する必要性も示唆されています。
この研究を読むときの注意点
対象者は22人で、特定の施設で行われた観察研究です。そのため、「夜勤明けに午前中に食事を取れば、必ず睡眠が改善する」と証明した研究ではありません。日本のICU看護師の生活を考えるための一つの手掛かりとして捉えます。

夜勤明けは、帰って眠ることだけでなく、食事や光を浴びる時間も関係している可能性があるんですね!

そうだね。ただし、連続夜勤(入明入明休)なのか、夜勤後に昼型の生活へ戻すのかでも過ごし方は変わるよね。自分の勤務と生活に合った方法やパターンを探すことが大切だね!
疲労管理は個人だけの問題ではない
ここまで、個人でできる工夫を紹介してきました。
しかし、夜勤による疲労を、看護師一人ひとりの自己管理だけに任せてよいわけではありません。
仮眠を取れる勤務体制、休憩できる環境、勤務間隔、人員配置、相談しやすい職場づくりなど、組織側が考えるべきこともあります。

眠気や疲れで、仕事や運転が危ないと感じたら、我慢しないで相談してね。一人で何とかしなければいけない問題ではないから
「夜勤がつらい」と伝えることは、弱さではありません。
自分自身と患者さんの安全を守るための大切な行動です。
私はサウナで気持ちを切り替えていました

坂コー先生は、夜勤の疲れをどうやってリセットしていたんですか?

私の場合は、サウナに行くことが切り替えになっていたよ。
今でも週末は朝の6時くらいから行って一週間の疲れをリセットしてるんだ!
私にとってサウナは、気持ちを切り替えるための時間でした。
加藤容崇医師のベストセラー『医者が教えるサウナの教科書』では、サウナに関する研究や、安全に楽しむための考え方が分かりやすく紹介されています。
サウナには、どんな効果がある?
「サウナ」と聞くと、おじさんたちが熱さを我慢しながら入り、汗をたくさんかいている――そんな少し汗くさい光景を思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし近年では、サウナと健康との関係について、さまざまな研究が行われています。
その一つが、フィンランドのKIHD(Kuopio Ischemic Heart Disease Risk Factor Study)です。
この研究では、東部フィンランドに住む42~60歳の男性2,315人を、中央値で約21年間追跡しました。その結果、サウナを利用する回数が多い人ほど、突然死や心臓・血管の病気による死亡、あらゆる原因による死亡のリスクが低いという関連が認められました。
ただし、これは長期間にわたって人々の生活と健康状態を観察した研究です。
「サウナに入ったから、死亡リスクが下がった」と因果関係を証明したものではありません。
サウナをよく利用する人には、運動習慣や生活環境など、サウナ以外の違いがあった可能性もあります。また、対象はフィンランドの中年男性であり、日本で働く看護師にそのまま当てはめることもできません。
とはいえ、面白い研究結果だなぁと思います。
「サウナの後はよく眠れる」と感じる人は多い
睡眠との関係については、2019年に発表されたGlobal Sauna Surveyという国際的な調査があります。
この調査では、サウナを利用している人の多くが、サウナに入る理由として「リラックス」を挙げていました。また、回答者の83.5%が、サウナに入った後の1~2晩は睡眠がよくなったと感じていました。
つまり、サウナ利用者のおよそ5人に4人が、「サウナの後はよく眠れた」と回答したことになります。
睡眠中の脳波や活動量を測定した研究ではありませんが、「サウナの後によく眠れたと感じる人が多い」ようです。
私自身も、夜勤で疲れたときにサウナを利用していました。ただし、私にとってサウナは、失った睡眠を取り戻すための方法というより、仕事から離れ、気持ちを切り替えるためのリフレッシュ方法でした。
サウナを夜勤疲れの「治療法」と考えるのではなく、自分に合った休息や気分転換の選択肢の一つとして捉えるのがよいと思います。

夜勤明けのサウナは、体調を最優先に
強い眠気や脱水、体調不良がある場合は、サウナの利用を控えましょう。
利用する場合も、十分に水分を取り、無理をしないことが大切です。
また、眠気がある状態での運転は避けてください。
参考文献
- National Institute for Occupational Safety and Health(NIOSH).
Training for Nurses on Shift Work and Long Work Hours.
DHHS(NIOSH)Publication No. 2015-115, 2015(revised 2024).
NIOSH公式オンライン教材
- 岩崎賢一,山口曜子.
ICUで交替制勤務に従事する看護師の睡眠の質に影響する生活行動時刻の把握.
日本看護科学会誌.2023;43:63–70.
J-STAGE掲載論文 - Laukkanen T, Khan H, Zaccardi F, Laukkanen JA.
Association Between Sauna Bathing and Fatal Cardiovascular and All-Cause Mortality Events. JAMA Internal Medicine. 2015;175(4):542–548.
PubMed掲載情報 - Hussain JN, Greaves RF, Cohen MM.
A Hot Topic for Health: Results of the Global Sauna Survey.
Complementary Therapies in Medicine. 2019;44:223–234.
PubMed掲載情報
おわりに
夜勤がつらいのは、あなたの根性が足りないからとは限りません。
夜勤は、身体が本来眠ろうとしている時間に働く勤務です。
仮眠、カフェイン、睡眠環境など、文献で検討されている工夫はありますが、すべてを完璧に行う必要はありません。
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自分の生活に取り入れられそうなことを一つずつ試し、自分に合う方法を探してみてください。
そして、疲労や眠気を自分一人だけの問題にしないでください。
つらいときに周囲へ相談することも、自分と患者さんを守るための大切な行動です。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※本記事は、夜勤と睡眠に関する一般的な情報を紹介するものです。強い眠気や不眠、体調不良が続く場合は、一人で抱え込まず、上司、医療機関などへご相談ください。




