血圧が低くなければ大丈夫?――ベッドサイドでショックに気づく

前回は、ショックを「循環血液量減少性」「心原性」「血液分布異常性」「閉塞性」の4つに分けて考えました。

では、患者さんのショックにどう気づけばよいのでしょうか。

学生
学生

血圧が低くなければショックじゃないですよね?

新人看護師
新人看護師

ショックは『血圧が低いこと』ではなく、酸素の需給バランスが負になって組織が酸欠になっている状態なのよ。

……でも、具体的にはどこをみていけばいいんだろう??

坂コー先生
坂コー先生

いいね、前回の内容が理解できてるね!
そして、とても大切な疑問だね。
血圧はもちろん重要だけれど、血圧だけを見ていると、患者さんの変化を見落としてしまうことがあるんだ。

今回のテーマは、ショックを診断することではありません。

患者さんの異変に気づき、必要な行動につなげることです。

今回、最も伝えたいこと

ベッドサイドでの小さな変化は、患者さんから発せられている大切なサインです。

その変化に気づき、確かめ、行動し、チームへ伝える。
それは、患者さんのそばにいる看護師だからこそできることです。

血圧が保たれていても、安心とは限らない

ショックでは、全身の組織へ必要な酸素を届けられなくなっています。

しかし、組織への血流が悪くなり始めた瞬間から、必ず血圧が低下するとは限りません。

身体は心拍数を増やしたり、末梢血管を収縮させたりして、重要な臓器への血流を保とうとします。

こうした代償反応によって、血圧が一見保たれていることがあります。

そのため、

  • 血圧が正常だから大丈夫
  • モニターのアラームが鳴っていないから大丈夫
  • 検査値がまだ悪くないから大丈夫

とは言い切れません。

数字が大きく崩れる前に、患者さんの様子が少しずつ変わっていることがあります。

組織灌流を捉える「3つの窓」

ショックの本質は、全身の組織へ必要な酸素を届けられなくなることです。

しかし、私たちはベッドサイドで、すべての臓器の血流を直接見ることはできません。

そこで、患者さんの身体に表れる変化を通して、組織灌流を考えていきます。

ショックの臨床評価では、次の「3つの窓」が重要とされています。

組織灌流を捉える3つの窓

  1. 脳――意識や反応
  2. 皮膚――末梢循環
  3. 腎臓――尿量

1.脳の窓――意識や反応を見る

脳への血流が十分でなくなると、意識や反応に変化が現れることがあります。

  • いつもより反応が鈍い
  • 会話がかみ合わない
  • 落ち着きがない
  • 眠気が強くなった
  • 急に不安そうになった

大切なのは、意識レベルの数値だけを見るのではなく、普段の患者さんと比べて、どのように変化したかを見ることです。

ただし、意識状態は、鎮静薬、睡眠不足、せん妄、低酸素、低血糖などでも変化します。

「意識状態が変化したからショック」と決めつけず、ほかの所見と組み合わせて考えます。

2.皮膚の窓――末梢循環を見る

皮膚は、特別な機器を使わなくても、見て、触れて、繰り返し評価できる場所です。

  • 手足が冷たくなっていないか
  • 皮膚が青白くなっていないか
  • まだら模様が現れていないか
  • 冷汗が出ていないか
  • 毛細血管再充満時間が延長していないか
  • 末梢の脈が弱くなっていないか

毛細血管再充満時間は、爪床などを一定時間圧迫し、皮膚の色が戻るまでの時間を見る方法です。

簡便で繰り返し確認できますが、室温、皮膚温、年齢、照明、測定方法などの影響を受けます。

一度の結果だけで判断せず、同じ場所、同じ方法で、経時的に変化を見ることが大切です。

3.腎臓の窓――尿量を見る

尿量は、腎臓への血流や全身状態を考える重要な手掛かりです。

  • 時間尿量が減ってきていないか
  • 前の時間帯と比べて減少していないか
  • 急に尿が出なくなっていないか
  • 尿の色や濃さが変化していないか

ここでも重要なのは、現在の尿量だけではなく、これまでの推移です。

ただし、尿量低下がすべて循環血液量の減少を意味するわけではありません。

腎機能、薬剤、尿路の閉塞、尿道カテーテルの屈曲や位置など、ほかの原因も確認します。

3つの窓だけで判断するわけではありません

3つの窓は、組織灌流をベッドサイドで捉えるための重要な入口です。

実際には、血圧、心拍数、呼吸数、酸素化、体温、乳酸値、血液ガス、患者背景、治療内容なども組み合わせて評価します。

新人看護師
新人看護師

血圧だけではなく、意識、皮膚、尿量を通して、全身に血液が届いているかを考えるんですね。

坂コー先生
坂コー先生

そう。3つの窓から見える変化を組み合わせると、モニターの数字だけでは分からない患者さんの変化に気づきやすくなるよ!

大切なのは「点」ではなく「線」で見ること

3つの窓を見るときも、一度の観察だけで判断するのではなく、時間の経過に沿って変化を捉えます。

例えば、収縮期血圧が110mmHgだったとします。

この数値だけを見れば、「血圧は保たれている」と考えるかもしれません。

しかし、その患者さんが、

  • 普段は収縮期血圧が150mmHg前後だった
  • 1時間前は130mmHgだった
  • 心拍数が徐々に増えている
  • 手足が冷たくなってきた
  • 尿量が減ってきた
  • 少し反応が鈍くなってきた

という状況であれば、見え方は変わります。

現在の値だけを見るのが「点」の観察です。

患者さんの普段の状態や少し前の状態と比べ、変化の方向を見るのが「線」の観察です。

ICUでは多くの数値が表示されますが、その数値を、3つの窓から見える患者さんの変化と結びつけることが重要です。

おわりに

ショックに気づくために大切なのは、血圧という一つの数字だけを見ることではありません。

脳・皮膚・腎臓という「3つの窓」から患者さんを見て、いつもの状態や少し前の状態と比べながら、変化を捉えることが大切です。

ベッドサイドで患者さんに触れ、声をかけ、尿量を確認している看護師だからこそ、モニターの数字が大きく変わる前に気づけることがあります。

その時点では、何が起きているのかを一人で説明できなくても構いません。

「何かおかしい」と気づいたら、患者さんのそばで確かめ、必要な行動をとり、その変化をチームへ伝える。

その小さな気づきと発信が、患者さんを救うことにつながります。

次に患者さんのそばへ行ったときは、モニターの数字と一緒に、3

つの窓から見える変化にも目を向けてみてください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。