2026年10月、2025年の心不全診療ガイドラインに合わせて内容を更新しました。
息切れがあり、採血の数値も高い。そんなとき「心不全だ」とすぐに決めてよいのでしょうか。診断で集める情報と、看護で伝えたい変化を整理します。会話と例は学習用のフィクションです。

先生、心不全は採血で診断するのでしょうか。それとも、心臓の動きが悪いと分かれば診断できるのでしょうか?

どちらも大切な情報だけど、1つの検査だけで決めるわけではないよ。症状や診察で得た所見、採血、心エコーなどをつないで、心臓に由来する問題があるかを考えるんだ。
心不全は「心臓の異常」と「症状・徴候」をつなげて考える
心不全は、心臓の構造や機能の異常によって、うっ血や心内圧上昇、心拍出量低下や組織低灌流が起こり、息切れ・浮腫・倦怠感などの症状や運動耐容能の低下を来す症候群です(第2章1.1、p.19)。
診断では「息切れがある」だけでも、「採血が高い」だけでも不十分です。心臓の異常が症状や徴候とどう結びつくのかを、複数の情報から評価します。肺疾患、貧血、腎疾患など、心不全以外の原因や併存疾患も検討します。
診断の流れを4つに分けてみる
2025年ガイドラインの図8「心不全の診断プロセス」を、学習用に言葉で整理すると次の流れです。検査をすべて順番に待つという意味ではありません。急変時は状態の評価と対応を優先し、並行して進めます。
- 心不全を疑う情報を集める:病歴、症状、身体所見、心電図、胸部X線、一般的な血液検査などを確認する。
- ナトリウム利尿ペプチドを確認する:BNP(B-type natriuretic peptide:B型ナトリウム利尿ペプチド)やNT-proBNP(N-terminal pro-B-type natriuretic peptide:B型ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端断片)を、状況に応じて診断の補助に使う。
- 心エコーで構造と機能を評価する:左室の収縮だけでなく、拡張、弁膜症、右心系なども評価し、必要に応じて追加検査を行う。
- 診断後に分類・原因・増悪因子を整理する:左室駆出率による分類、原因疾患、今回悪くなったきっかけを調べ、治療方針につなげる。
出典:第4章1、図8・9、pp.29–31;同章3.1.1、p.34;同章4.1.1、pp.36–37。

では、足の浮腫がなく、左室駆出率が保たれている患者さんでも、心不全を考える必要があるのですね?

そうだよ。足の浮腫は所見の1つで、全員に出るわけではないんだ。横になると苦しいのか、呼吸や胸部の所見はどうか、検査結果はどうかを合わせて見よう。
観察は「うっ血」と「血流不足」の両方から
| 観察の視点 | 確認したいこと | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 肺うっ血を疑う変化 | 息切れ、横になると苦しい、呼吸数や呼吸の努力、肺の聴診所見 | 「昨夜から臥位を保てず、座って休んでいます」 |
| 体うっ血を疑う変化 | 頸静脈怒張、浮腫、体重増加、腹部膨満など | 「同じ条件で測った体重が増え、下腿の浮腫も増えました」 |
| 低心拍出・組織低灌流を疑う変化 | 末梢冷感、尿量減少、意識の変化など | 「手足が冷たくなり、尿量も普段より減っています」 |
これらは心不全だけに特有の変化ではありません。所見の有無だけで決めず、時間経過と他の情報を合わせます。「頸静脈怒張」は静脈の所見であり、頸動脈の拍動とは区別します(第4章2.1–2.2、表12、pp.30–32)。
たとえば「息切れがある、浮腫はない」という情報に、「横になると悪化する」「いつもより歩けない」「呼吸数が増えた」を加えると、再評価すべき変化が伝わります。浮腫がないことだけで心不全を除外しません。
強い呼吸困難や意識の変化など急な悪化があれば、診断が確定するのを待たず、担当医療チームへ速やかに共有し、施設の急変対応に沿って動きます。
BNPと心エコーは「関係ない」のではなく、重要な診断情報
非急性期に心不全の可能性を拾い上げる目安として、ガイドラインではBNP 35 pg/mL以上、NT-proBNP 125 pg/mL以上を示しています。ただし、値だけで心不全と確定するものではありません。腎機能低下や心房細動などで高くなり、肥満などで低く出ることもあります(第4章3.1.1、図12、pp.34–35)。詳しくはBNP・NT-proBNPの読み方へ。
LVEF(left ventricular ejection fraction:左室駆出率)が保たれていても、HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction:左室駆出率の保たれた心不全)は否定できません。心エコーではLVEF以外の構造や機能も評価します。分類はHFrEFとHFpEFの違いで整理しています。
また、胸部X線は心拡大・うっ血や他疾患を検討するために役立ちますが、身体所見と胸部X線だけですべての診断が決まるわけではありません(第4章2.4、p.33)。

「心不全だと思います」だけでなく、症状の変化、身体所見、検査結果を分けて伝えればよいのですね。

その通り。何が分かっていて、何をまだ確認できていないかも大事だね。患者さんの普段との差を、チームが判断に使える言葉で伝えていこう。
今日のひと工夫
息切れを報告するとき、「いつから」「何をすると・どの姿勢で悪化するか」「普段と比べてどうか」を1つずつ確かめましょう。確認できた事実と、自分が心配していることを分けると伝わりやすくなります。
循環の変化を整理するには3つの窓、病態を考えるにはショックの4分類、尿量の解釈には尿量は循環の窓も参考になります。
参考文献
日本循環器学会・日本心不全学会:2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(2025年3月28日発行、2025年12月19日更新)。第2章1.1、p.19;第4章1–4.1.1、pp.29–37(図8・9、表12、図12)。本記事の例と表は学習用に独自に整理したもので、ガイドラインの図表の転載ではありません。
本記事は学習用です。個別の診断・治療は担当医療チームの判断に従ってください。










