第3回では、ショックに気づくための「3つの窓」として、脳(意識)・皮膚(末梢循環)・腎臓(尿量)を紹介しました。前回は、その手がかりの一つである乳酸値を考えました。
今回は、3つの窓のうち腎臓=尿量に注目します。
※登場人物と会話は、学習のためのフィクションです。

この2時間、尿量どれくらい出てる?

えっと……1時間に20mLくらいです。少ないとは思ったんですけど、血圧は保たれていたので、様子を見ていました。

「血圧は大丈夫だから」は、ICUでよく聞く言葉だね。でも腎臓は、血圧の数字より先に「血流が足りないかも」と教えてくれることがあるんだ。今日は、なぜ尿量が循環の窓になるのかを考えてみよう。
まず結論:尿量は、循環と腎臓の状態を考える手がかり
今回のポイント
- 健康な成人の腎臓には、心拍出量の約20〜25%が流れ込む
- 循環の変化で尿が減ることがあるが、腎障害・うっ血・閉塞なども考える
- 尿量は「体重あたり・1時間あたり」で、経時的に見る
- 「尿が出ている=安心」ではない。出ている理由も考える
腎臓は「血流をたくさん受け取る臓器」
腎臓は、こぶし大の小さな臓器が左右に1つずつあるだけです。しかし、健康な成人では、心臓が1分間に送り出す血液のうち、約20〜25%が腎臓に流れ込んでいます。
なぜそんなに血液が必要なのでしょうか。
腎臓の仕事は、血液をろ過して、身体に要らないものを尿として捨てることです。糸球体でろ過される原尿は成人の概数で1日に約150Lなどと説明されますが、そのほとんどは尿細管で再吸収され、実際に尿として出ていくのは1日1〜1.5L程度が一つの代表例です。これらは体格・年齢・摂取水分などで変わります。
たくさんの血液を受け取り、たくさんろ過して、必要なものを取り戻す。腎臓は、血流があることを前提に働いている臓器だといえます。

血圧が下がる前に、尿量が減ることもあるんですね。

そう。ただ、尿量が少ない理由は一つではないんだ。血流の変化だけでなく、腎臓そのものや尿の通り道も確かめよう。
循環が足りないと、なぜ尿が減るのか
循環血液量が減ったり、心臓のポンプ機能が落ちたりすると、身体はまず生命維持に欠かせない脳や心臓への血流を守ろうとします。
そのとき、身体の中では次のような反応が起こります。
- 交感神経が働き、皮膚や腎臓などの血管を収縮させる
- 腎臓への血流が減ると、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が働き、ナトリウムと水を体内に保持する
- 下垂体から抗利尿ホルモン(ADH)が分泌され、水の再吸収が増える
循環血液量が減ったときなどには、このような水とナトリウムの保持によって尿量が減ることがあります。血圧が保たれていても、循環の変化を知らせる場合があるのです。
ただし、尿量の低下には、腎臓そのものの障害、静脈のうっ血、尿路の閉塞など、ほかの原因もあります。敗血症では、全身の血圧や血流だけでは説明できないAKIも起こります。尿量は腎血流を直接測っている数字ではありません。クレアチニンの変化、病態、薬剤、ほかの観察所見も合わせて考えます。

血圧が保たれていても、尿が減った理由を早めに確かめるんですね。

その通り。いつから減ったのか、カテーテルの問題はないか、ほかの窓はどうかを確かめて、チームへ伝えよう。
尿量はどう見る?――「体重あたり」「1時間あたり」「流れ」
ICUで尿量を1時間ごとに測るのは、変化を早く捉えるためです。
急性腎障害(AKI)の診断基準として広く使われているKDIGO分類では、尿量について次のような基準が示されています。
| 重症度 | 尿量の基準 |
|---|---|
| ステージ1 | 0.5 mL/kg/時 未満が6時間以上12時間未満 |
| ステージ2 | 0.5 mL/kg/時 未満が12時間以上 |
| ステージ3 | 0.3 mL/kg/時 未満が24時間以上、または無尿が12時間以上 |
AKIは、血清クレアチニンまたは尿量の基準を満たすことで診断されます。両方を確認し、重症度は該当する高いステージで判定します。両方がそろうまで待つ必要はありません。上の表は尿量による病期分類だけを示しています。
この時間は診断・分類のための基準で、報告を待つ時間ではありません。 急な尿量低下や意識・皮膚・血圧などの悪化は、施設の手順に沿って速やかに報告します。
ここで大切なのは、体重で考えることです。
例えば体重60kgの患者さんなら、0.5 mL/kg/時は30 mL/時です。冒頭の「1時間20mL」が続いていれば、この目安を下回っていることになります。体重40kgの患者さんと80kgの患者さんでは、同じ「1時間20mL」でも意味が違います。40kgなら0.5、80kgなら0.25mL/kg/時です。0.5ちょうどは「0.5未満」には該当しません。
そして、1回の値だけではなく、時間の流れで見ることも大切です。
- 尿量が少しずつ減ってきていないか
- 輸液や昇圧薬などの治療の後に、尿量がどう変化したか
- 尿の色や濃さは変わっていないか
「尿が少ない」と思ったら、まず確かめたいこと
尿量の低下に気づいたとき、すぐに「循環が悪い」と決めつけず、看護師がベッドサイドで確かめられることがあります。
尿量が少ないときのベッドサイド確認
- カテーテルや回路の問題はないか:屈曲、閉塞、蓄尿バッグの位置、チューブ内の尿のたまり
- 膀胱に尿がたまっていないか:下腹部の張り、施設の手順に沿った確認
- ほかの窓はどうか:意識の変化、皮膚の冷感・まだら模様、毛細血管再充満時間(CRT)、乳酸値
- 水分の出入りはどうか:輸液量、出血、ドレーン排液、下痢、発熱
流れが詰まっているだけなのに、循環の問題だと考えてしまうことは避けたいですし、逆に循環が悪化しているのに、カテーテルのせいだと思い込むことも避けたいところです。
腎臓の窓だけで判断せず、脳と皮膚の窓も一緒にのぞくことで、身体全体で何が起きているかを考える材料が増えます。
尿量が少ないという理由だけで輸液を増やせばよいとは限りません。循環血液量の不足、輸液反応性、うっ血や過剰な水分の有無を医療チームで判断します。
「尿が出ている=安心」ではない
反対に、尿がしっかり出ているからといって、必ずしも循環が十分とは限りません。
例えば、
- 利尿薬を使用している
- 高血糖で、尿中に糖が出ることによって尿量が増えている(浸透圧利尿)
- マンニトールなどの浸透圧利尿薬を使用している
といった場合には、循環が十分でなくても尿量が多くなることがあります。尿量が保たれるAKIもあるため、クレアチニンなども確認します。
尿量は大切な手がかりですが、「なぜ、この量が出ているのか」を一緒に考えることが必要です。

尿量も乳酸値と同じで、数字だけで決めつけちゃいけないんですね。

まさにそう。前回の乳酸値と同じで、尿量も「警報」なんだ。鳴った理由を、ほかの窓や治療の経過から探していこう。
報告するときは「量」と「流れ」をセットで
尿量の低下を先輩や医師に伝えるときは、数字だけでなく、変化の流れと、自分が確かめたことを添えると伝わりやすくなります。
「〇〇さん、体重60kgです。この3時間、尿量が15〜20mL/時、体重あたり約0.25〜0.33mL/kg/時に減っています。カテーテルの屈曲はありませんが、尿閉の評価も必要だと思います。手足が冷たく、CRTも延長しています。循環の悪化を心配しています。今、評価をお願いできますか。」
「何が」「どれくらい続いていて」「何を確かめて」「どう考えたか」。この流れで伝えられると、次の判断につながりやすくなります。
まとめ
- 健康な成人では、左右の腎臓に心拍出量の約20〜25%が流れ込みます。
- 循環の変化で水を保持して尿量が減ることがありますが、腎障害・うっ血・閉塞も考えます。血圧が保たれていても、尿量の低下は早めのサインになりえます。
- 尿量は体重あたり・1時間あたりで、時間の流れの中で見ます。
- 尿量が少ないときは、カテーテルの問題やほかの窓(意識・皮膚・乳酸値)も確かめます。
- 尿が出ていても、利尿薬や高血糖などで「見かけ上出ている」ことがあります。
尿量を「ただの数字」ではなく、循環と腎臓の状態を考える手がかりとして読むと、ベッドサイドでの見え方が少し変わってくるはずです。
次回は、皮膚の窓に関わる新しい研究を紹介する予定です。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※本記事は、尿量と循環に関する一般的な学習情報です。個々の患者さんの評価や治療は、病態、検査結果、使用薬剤などを踏まえて医療チームで判断してください。
参考文献
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney Int Suppl. 2012;2(1):1–138.
- AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会編:AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016.日本腎臓学会誌.2017;59(4):419–533.
- Cecconi M, De Backer D, Antonelli M, et al. Consensus on circulatory shock and hemodynamic monitoring. Task force of the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Med. 2014;40(12):1795–1815. https://doi.org/10.1007/s00134-014-3525-z
- Monnet X, et al. ESICM guidelines on circulatory shock and hemodynamic monitoring 2025. Intensive Care Med. 2025. https://doi.org/10.1007/s00134-025-08137-z









