家族への支援が大切なことは分かっていても、「家族中心のケア」が何をすることなのか、説明するのは意外と難しいものです。
本記事は、米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine:SCCM)の「成人ICUにおける家族中心のケアのガイドライン2024(2025年公表)」を読み解くシリーズです。
5回に分けて読み解いていけたらと思います。
第1回は、2024年版ガイドラインの全体像をつかみます!
※学習用の解説です。会話と声かけの例はフィクション、推奨の日本語訳は本記事の独自訳です。
この記事で扱う推奨
全17項目の全体像(強い推奨1、条件付きの推奨14、ベストプラクティス声明2)。2017年版から大きく変わった2項目、新しい6項目、引き継がれた9項目に分けて整理します。
出典:[1,2] 本編PDF1–4・27–28、要約e459–e463 Table1–2。

家族中心のケアは、面会を増やすことですか? 前のガイドラインと何が変わったのでしょうか。

面会は大事な入口だけど、それだけではないよ。ケアへの参加、説明、家族の心の支え、休める場所、それに支える医療者の体制まで含むんだ。まず、何が変わって、何が新しいのかを見てみよう。
2024年版は、2025年に公表された成人ICUの指針
米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine:SCCM)の「成人ICUにおける家族中心のケアのガイドライン2024」は、2025年2月に公表されました。集中治療室(Intensive Care Unit:ICU)のうち、今回の対象は成人です。2017年版は新生児・小児も対象でしたが、今回は成人に絞られています。[1,2]
改訂の背景には、新型コロナウイルス感染症の流行で面会が制限されたことや、医療者の燃え尽きがあります。ただし、面会について検討された研究は、いずれもコロナ前に行われたものです。
推奨の強さと確実性の読み方
「強さ」は、その行動をどのくらい勧めるか。「根拠の確実性」は、効果の見積もりをどのくらい信頼できるか。別々のものさしなので、強い推奨でも確実性が低いことがあります。条件付きの推奨は一律の義務ではなく、本人・家族の希望、安全、施設の体制をふまえて考えます。

強い推奨なのに根拠の確実性が低い、と書いてあるのが気になります。矛盾していないのですか?

二つは別のものさしなんだ。研究の結果だけでなく、家族にとっての大切さや負担も合わせて、どのくらい勧めるかを決めているんだよ。
17項目を、変更・新規・継続で見渡す
次の表は原典の表を転載せず、要約論文の区分に沿って独自に整理しました。「新規」は成人ICUを扱う今回の指針における位置づけで、過去に一切言及がなかったという意味ではありません。
| 区分 | 項目 | 今回の位置づけ |
|---|---|---|
| 変更 | 面会方針の緩和 | 条件付きから強い推奨へ/確実性は低い |
| 変更 | 家族向け意思決定支援ツール | 特定のツールへの賛否の推奨なし/低い |
| 新規 | ベッドサイドケアへの参加 | 条件付き/非常に低い |
| 新規 | 家族の心の健康の把握と支援 | 条件付き/低い |
| 新規 | 死別後の家族支援 | 条件付き/低い |
| 新規 | 医療者向け支援ツール | 賛否の推奨なし/低い |
| 新規 | 医療者を支える仕組み | 条件付き/低い |
| 新規 | 公平な支援を妨げる要因を見つけて減らす | ベストプラクティス声明 |
| 継続 | 回診への家族参加 | 条件付き/非常に低い |
| 継続 | 蘇生への立ち会い | 支援担当者を置く/条件付き/低い |
| 継続 | 家族への教育 | 条件付き/中等度 |
| 継続 | ICU日記 | 条件付き/低い |
| 継続 | スピリチュアルなニーズへの支援 | 条件付き/低い |
| 継続 | 家族が休める場所・設備 | ベストプラクティス声明 |
| 継続 | 家族との面談や話し合いの進め方をそろえる | 条件付き/低い |
| 継続 | 医療者のコミュニケーション研修 | 施設の体制が許せば/条件付き/低い |
| 継続 | 研修中の医師などへの、模擬患者を使ったコミュニケーション研修 | 条件付き/低い |
17項目には「賛否どちらの推奨もしない」ものも含まれます。17項目すべてを導入すべきチェック表として読むものではありません。[1,2]
ベストプラクティス声明は「根拠が最も確か」という意味ではありません。研究で比べにくいものの、行うべきことが明らかだと委員会が判断した方針で、確実性の評価は付いていません。

家族への支援だけでなく、私たちが続けられる体制まで考えるのですね。まず、どこから始めればよいでしょうか?

自分たちの今の仕組みと比べるところから始めよう。家族が質問できる機会はあるか、来られない人にも情報が届くか。できていることと、チームで直したいことを一つずつ挙げてみよう。
家族への支援を、面会の外にも広げる
家族が来られない日、説明を十分理解できないとき、亡くなったあとにも支援の課題は残ります。「面会に来た家族に何かすること」だけを家族中心のケアと考えると、来られない家族に支援が届きません。このシリーズでは、面会、ケアへの参加、家族の心の支援、医療者への支援の順に読んでいきます。
本シリーズ後には、2026年9月に公表された「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」を扱う特集を予定しています。なお、SCCMは緩和ケアや倫理コンサルテーションなどの話題を、今後の終末期のガイドラインで扱う予定としています。[2,3]
明日からできる一歩
申し送りやカンファレンスで、家族への支援でできていることと、困っていることを一つずつ挙げてみましょう。(本記事からの提案です)
家族ケアを、事例でもう少し学びたい方へ
ガイドラインの全体像をつかんだら、具体的な場面での関わりも考えてみませんか。
『あらゆる場面で使える 救急・ICUナースのための家族ケア』は、日常の家族ケアから、特殊な状況での支援、医療者のストレスやジレンマまで扱う一冊です。
編著の立野淳子先生は、この領域を牽引してこられた第一人者です。私も以前、学会の委員会でご一緒し、家族ケアについて多くのことを学ばせていただきました。
私も本書の一部(pp.200–206)を分担執筆しています。今回のガイドラインとあわせて、事例から家族ケアを考えたい方にご紹介します。
シリーズ目次
- 第1回:家族中心のケアのガイドライン、2017年から何が変わった?(11/1 7:00公開予定)
- 第2回:せん妄に差がなくても、面会を広げる理由は?――家族中心のケアの指針を読む(11/2 7:00公開予定)
- 第3回:家族と一緒にケアする――参加を勧めることと、任せることの違い(11/3 7:00公開予定)
- 第4回:家族の心と、亡くなったあとの支援――「この方法なら安心」と言えないときに(11/4 7:00公開予定)
- 第5回:家族を支える医療者を支える――公平なケアを、個人の頑張りにしない(11/5 7:00公開予定)
関連する勉強ノート
参考文献
- Hwang DY, et al. Society of Critical Care Medicine Guidelines on Family-Centered Care for Adult ICUs: 2024. Crit Care Med. 2025;53:e465–e482. 本編
- Hwang DY, et al. Executive Summary: Society of Critical Care Medicine Guidelines on Family-Centered Care for Adult ICUs. Crit Care Med. 2025;53:e459–e464. 要約
- 日本循環器学会. 4学会合同ガイドライン公表のお知らせ(2026年9月28日).











