ご家族に話を聞き、説明の機会を整え、困りごとをチームにつなぐ。そのような支援は、何をもって「よくなった」と評価できるのでしょうか。
今回は、スイスのFICUS(Family Support in Intensive Care Units:集中治療室における家族支援)試験を読みます。ICU(intensive care unit:集中治療室)での家族支援について、ケアへの満足度と、その後の心の健康を分けて考えることがテーマです。
※登場人物と会話、後半の相談例は学習用のフィクションです。

看護師が行う家族支援で、満足度は改善した一方、心の健康には明確な改善が見られなかったんだって。同じ支援なのに、結果が違うこともあるんだね。

何を評価したかが違うんだ。「家族支援は効く・効かない」の一言でまとめずに、まず二つの報告を並べてみよう。
同じ試験から、異なる問いに答えた二つの報告
FICUSは、スイスの成人ICU16か所で行われたクラスター無作為化比較試験です。患者さんや家族を一人ずつではなく、ICU単位で介入群と通常ケア群へ割り付け、家族885人が参加しました。[1]
介入では、研修を受けた家族支援担当の看護師が、家族との関係づくりと調整、心理教育などの支援、多職種でのコミュニケーションを組み合わせました。通常ケアに追加する支援であり、「家族支援あり」と「家族支援なし」の比較ではありません。[1]
| 報告 | 主に読む結果 |
|---|---|
| 2025年の主要報告 | 主評価項目である、ICUケアに対する家族満足度など |
| 2026年の副次評価報告 | 退室後を含む家族機能や心の健康など |
主評価項目は、その試験で中心に据えた評価です。副次評価も大切ですが、どの問いの結果を読んでいるかを確かめます。[1,2]
満足度は、小さな改善。大きさも見てみよう
2025年報告では、家族満足度の平均は介入群81.78点、通常ケア群79.39点でした。100点満点で、群間差の推定値は2.39点、95%信頼区間は0.31〜4.47点です。著者らは、小さい統計学的な改善がある一方、臨床的な意味には不確実さがあるとしています。[1]
数字を読む練習:2.39「点」と2.39「%」は同じ?
平均値を引いてみましょう。
81.78 − 79.39 = 2.39点です。この差は満足度尺度の点数で、「満足した家族が2.39%増えた」という人数の割合ではありません。また、全員が2.39点ずつよくなったという意味でもありません。
信頼区間は、推定の不確かさを考える情報です。今回の区間は差がない基準の0点を含みません。ただし、0を含まないことだけで「家族にとって十分に大きな改善」とは判断できません。統計学的な違いと、その違いが生活やケアに持つ意味を分けて読みます。

「有意に改善した」だけじゃなくて、何点違ったかを見るんだね。満足度がよくなったからって、その後の不安も必ず減るとは言えないのかな?

そこは、別の結果を確かめる必要があるね。説明を受けて納得できたことと、その後の生活で不安が軽くなることは、同じ評価ではない。よい結果を、測っていないところまで広げないようにしよう。
心の健康については、明確な改善を示せなかった
2026年の副次評価報告では、家族機能や不安・抑うつなどについて、主な解析で介入による明確な改善を検出しませんでした。観察された経過の改善を、介入だけの効果とすることもできません。[2]
欠測を補う解析では生活満足度に介入群で不利な差もあり、「すべての解析・すべての項目で差がなかった」とはまとめられません。探索的な副次評価であり、欠測や複数の評価を踏まえ、一つの結果だけで有益・有害を断定しないようにします。[2]
退室後も支援する計画だった。どこまで届いた?
介入はICU内だけでなく、退室後も含む計画でした。原著では退室後4〜12週の支援にも言及しています。[2]
決められた時期に、三つの構成要素を含む最低5回の支援を届ける基準を満たしたのは、介入群の23.1%でした。これは「23.1%の家族にしか関わらなかった」という意味ではありません。実施の時期・内容・回数を組み合わせた基準です。[2]
施設数が限られること、群間の患者背景の違い、欠測も解釈に影響します。[2] ただし、これらを「差が出なかった原因」と確定することはできません。計画された支援と、実際に届いた支援の両方を確認する材料として読みます。
看護へつなげるなら、目的と次の相談を具体的にする
ここからは、試験が有効性を検証した看護手順ではなく、本記事で提案する振り返りの視点です。
1.今日の支援で、何を目指したか
病状の説明を聞ける機会を整えたのか。本人が大切にしていたことを伝える機会をつくったのか。ご家族が休息や仕事との調整について相談できるようにしたのか。
「家族支援を実施」と一つにまとめる前に、その日に行ったことと目的を書き分けてみます。目的が具体的になると、何を確かめればよいかも見えてきます。
例えば、説明後に「今日の説明で、分かりにくかったところはありますか」と聞くことは、理解を確かめる一つの方法です。その返答から、ご家族の心の健康全体を評価し終えたとは考えません。
2.話を聞いた後、誰へつなぐか
架空の相談例です。
ご家族は治療の説明を理解できたと話されています。一方で、退院後の生活への心配が強いとのことでした。どのような相談先が使えるか、本人の意向を確認しながらチームで整理したいです。
支援を受けた満足感と、残っている困りごとは両方あり得ます。「説明に納得されたので支援は終了」と急がず、次に必要な関わりを考えます。必要な専門職への相談や継続的な支援も、施設の体制に沿って検討します。
3.次の療養場所で、相談先が分かるか
ICU退室は、家族の生活の問題まで終わったという意味ではありません。退室時には、誰へ何を引き継ぐか、家族が次に相談できる相手を知っているかを確かめたいところです。
この試験の担当看護師の配置や支援回数を、そのまま自施設へ導入すれば同じ結果になるとは限りません。自分たちの体制で何ができ、どこに支援の切れ目があるかを、具体的に相談するところから始めます。

家族支援の意味を一つの点数で決めずに、目的ごとに結果を読むんだね。私たちの支援でも、何をして、何が残っているかを分けて振り返ってみるよ。

そうだね。よくなったことを受け止めながら、届かなかった課題も残す。その両方が、次の支援を考える手がかりになるよ。
今日のひと工夫
家族との関わりを振り返るとき、「今日の目的」「確かめられたこと」「次に相談すること」を一つずつ言葉にしてみてください。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
- Naef R, Jeitziner MM, Riguzzi M, et al. Nurse-Led Family Support Intervention for Families of Critically Ill Patients: The FICUS Cluster Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2025;185(9):1138–1149. 原著
- Riguzzi M, Jeitziner MM, Rufer M, et al. The FICUS cluster randomized controlled trial of a family support intervention in adult intensive care units: mental health and family functioning outcomes. Intensive Care Med. 2026;52(4):637–650. 原著










