2026年10月、2025年の心不全診療ガイドラインに合わせて内容を更新しました。
心不全の申し送りで聞く「ヘフレフ」「ヘフペフ」。名前を覚えるだけでなく、何を分けているのか、どこまで分かるのかを整理しましょう。会話は学習用のフィクションです。

先生、ヘフレフとヘフペフは、何が違うのでしょうか?

どちらも心不全の分類だよ。左心室に入った血液のうち、1回の収縮でどれくらい送り出せるか。その割合で分けているんだ。まずは、その数字の意味から見てみよう。
EFは「1回に送り出す血液の割合」
EF(ejection fraction:駆出率)は、心室に満たされた血液のうち、1回の収縮で送り出される割合です。心不全の分類には、左心室の値であるLVEF(left ventricular ejection fraction:左室駆出率)を使います。この記事では、以後EFと書くときも左室駆出率を指します。
左室駆出率(%)=(左室拡張末期容積-左室収縮末期容積)÷左室拡張末期容積×100
たとえば、収縮する直前に左心室に120 mL、収縮したあとに72 mL残っていたとします。送り出した血液は120-72=48 mL。EFは48÷120×100=40%です。これは数字の意味を学ぶ計算例で、実際の測定は心エコーなどで行います。
「全身の血液の40%が流れる」「心臓の能力が40点」という意味ではありません。EFは割合なので、これだけでは実際に送り出す血液量や患者さんの循環状態を説明しきれません。
HFrEF・HFmrEF・HFpEFの境界は?
HFrEF(heart failure with reduced ejection fraction:左室駆出率の低下した心不全、ヘフレフ)、HFmrEF(heart failure with mildly reduced ejection fraction:左室駆出率の軽度低下した心不全)、HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction:左室駆出率の保たれた心不全、ヘフペフ)は、次のように分けられます。
| 分類 | 左室駆出率 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| HFrEF | 40%以下 | 40%ちょうどを含む |
| HFmrEF | 41〜49% | 「軽度」は駆出率の低下の程度で、心不全全体の重症度を意味しない |
| HFpEF | 50%以上 | EFが保たれていても心不全は起こる |
出典:2025年改訂版 心不全診療ガイドライン、第2章2、表6・図5、p.23。
この表は心不全と診断された患者さんの分類です。「EFが40%だから、その値だけで心不全と確定」「EFが60%だから心不全ではない」とは判断できません。測定値にも変動があるため、境界の1%だけにこだわらず、測定条件や経過も確認します。

EFが60%あっても、心不全になるのですね。「心臓の動きはよいから大丈夫」と考えていました。

割合が保たれていることと、心臓の働きがすべて正常なことは別なんだ。血液を受け入れるときの圧が高くなって、息苦しくなることもあるよ。EFと一緒に、症状やうっ血の所見を確かめよう。
HFpEFは「軽い心不全」ではない
心臓には、血液を送り出す働きと、血液を受け入れる働きがあります。HFpEFではEFが保たれていても、左室に血液を受け入れるための圧が高くなるなどして、肺うっ血や息切れを起こすことがあります。
ただし、「HFrEFは収縮だけの問題、HFpEFは拡張だけの問題」と完全に分ける説明も単純すぎます。HFrEFでも拡張機能障害を伴いますし、HFpEFの背景も一様ではありません。原因疾患や併存疾患を含めた評価が必要です(第2章2、pp.23–24)。
看護では、分類名に加えて「横になると息苦しい」「呼吸数が増えた」「体重や浮腫が変化した」といった情報を、いつから・どれくらい変わったかまで確認します。冷たい手足、尿量の減少、意識の変化など、臓器への血流不足を疑う所見にも注意します。EFが保たれていることを理由に、症状を軽く扱わないことが大切です。
診断に必要な情報の組み合わせは心不全ってどうやって診断するの?、採血の見方はBNP・NT-proBNPの読み方で整理します。
EFがよくなったら、心不全は治った?
HFimpEF(heart failure with improved ejection fraction:左室駆出率の改善した心不全)は、初回のEFが40%以下で、その後10ポイント以上改善し、40%を超えた場合の分類です。今の値だけでなく、過去からの変化を含めて考えます(第2章2、表6・図5、pp.23–24)。
たとえば35%から48%になった場合、48-35=13ポイントの改善で、現在は40%を超えています。この条件ではHFimpEFに該当します。「35%の10%分だけ改善」という相対的な増加率ではありません。
一方、39%から44%への変化は5ポイントなので、この定義には当てはまりません。現在のEFに基づく区分だけでなく、過去の値も申し送ると経過が伝わります。
EFの改善はよい変化ですが、改善=治癒、薬が不要という意味ではありません。再び機能が低下することがあり、治療の継続や調整は担当医療チームが判断します(第6章2.4、p.78)。

「以前35%、今回は48%」のように、前の値も伝えるのですね。分類名だけで安心せず、今の呼吸や循環の変化も確認します。

そうだね。EFは大切な情報だけど、患者さんの状態を全部表す数字ではないよ。過去の値と今の症状をつないで伝えると、チームで状況を共有しやすくなるね。
今日のひと工夫
申し送りに「現在のEF・以前のEF・いまの呼吸や循環の変化」の3つを添えてみましょう。値が確認できなければ推測せず、検査日と測定結果を確認します。
循環の観察はショックを見抜く3つの窓、病態の整理はショックの4分類へつながります。
循環器をまとめて学びたい方へ
本記事で以前から紹介している『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器』は、解剖生理や検査をまとめて学ぶ際の選択肢です。2019年刊のため、治療など更新される内容は現行ガイドラインと照合してください。
参考文献
日本循環器学会・日本心不全学会:2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(2025年3月28日発行、2025年12月19日更新)。第2章1.1・2、pp.19、23–24;第4章2、pp.30–33;第6章2.4、p.78。EFの計算は定義を理解するための学習例です。
本記事は学習用です。個別の診断・治療は担当医療チームの判断に従ってください。










