「ICUの論文を看護の目で読む」は、集中治療の論文を、看護師がベッドサイドで何を観察し、どう考えるかという視点から紹介するシリーズです。
今回は、毛細血管再充満時間(CRT)を治療の目標にした大規模な臨床試験を、原著論文から読んでみます。
※登場人物と会話は、学習のためのフィクションです。

先輩に「CRT見た?」って聞かれたんですけど、指先の色が戻るまでの時間から、本当に何か分かるんですか?

いい疑問だね。実はそれを、1,500人規模の臨床試験で確かめた研究があるんだ。CRTをほかの評価と組み合わせて治療を調整する方法を、通常治療と比べたんだ。「ANDROMEDA-SHOCK-2(2025年)」を一緒に読んでみよう。
まず結論
この研究から看護師が受け取りたいこと
- CRTは、ベッドサイドで繰り返し測れる「皮膚の窓」の指標
- 敗血症性ショックの初期に、CRTを目標にして治療を個別に調整する方法は、通常の治療より良い結果だった(主に生命維持治療の期間が短くなった)
- だからこそ、CRTは「同じ方法で」「正確に」測ることが大切
CRT(毛細血管再充満時間)とは
CRTは、指先などを圧迫して白くなった皮膚が、圧迫をやめてから元の色に戻るまでの時間です。
皮膚は、循環が足りなくなると血管が収縮して、血流が減らされやすい場所です。第3回で紹介した「3つの窓」のうち、皮膚の窓をのぞく方法の一つがCRTです。
大がかりな装置を使わず、ベッドサイドで繰り返し測れることが特徴です。
前の研究:ANDROMEDA-SHOCK(2019年)
この研究には前段階があります。
2019年に発表されたANDROMEDA-SHOCK試験では、敗血症性ショックの患者さんを対象に、
- CRTの正常化を目標に蘇生する方法
- 乳酸値の低下を目標に蘇生する方法
が比較されました。
28日死亡率は、CRTを目標にした群で低い傾向がありましたが、統計的に明らかな差とはいえませんでした。
この研究で、CRTは次のような方法で測られています。
ANDROMEDA-SHOCKでのCRTの測り方
- 右手の人差し指の末節の腹側に、スライドガラスを当てて圧迫する
- 皮膚が白くなるまで圧を強め、そのまま10秒間圧迫を保つ
- 圧迫をやめてから元の色に戻るまでの時間を、ストップウォッチで測る
- 3秒を超える場合を異常とする
ANDROMEDA-SHOCK-2でも、末節の腹側の皮膚をスライドガラスで10秒圧迫し、解除後の復色時間を測り、3秒超を異常とする中核手順は共通です。施設の手順を独自に変更するのではなく、採用している方法をチームでそろえてください。

10秒も押すんですね! 私、ちょっと押してすぐ離していました……。

そこが看護師にとっての大事なポイントなんだ。押す場所、押す時間、明るさ、手の温度で、CRTは変わってしまう。治療の目標にするなら、測り方をそろえる必要があるんだよ。
今回の研究:ANDROMEDA-SHOCK-2(2025年)
どんな研究?
- 対象:敗血症性ショックになってから4時間以内の患者さん
- 規模:19か国86施設、無作為化1,501人、解析対象1,467人
- 比較:
- CRTを目標にした個別化蘇生(720人):CRTに加えて、脈圧、拡張期血圧、輸液反応性、ベッドサイドの心エコーなどを評価し、輸液・昇圧薬・強心薬を患者さんごとに調整する
- 通常の治療(747人)
何を比べた?
主要評価項目は、28日時点での
- 死亡
- 生命維持治療(昇圧薬、人工呼吸、腎代替療法)の期間
- 入院期間
を、この優先順位で組み合わせた階層的な複合アウトカムです。患者さん同士をペアにして、どちらの結果がよいかを順番に比べる「win ratio(ウィン・レシオ)」という方法で評価されています。
結果は?
28日死亡率は、CRTを目標にした群26.5%(191/720人)、通常治療群26.6%(199/747人)でした。HR0.99(95%CI0.81〜1.21)、P=.91で、死亡率の有意差は検出されませんでした。
- win ratioは1.16(95%信頼区間 1.02〜1.33)で、CRTを目標にした群が通常の治療を上回りました。
- その差は、主に生命維持治療の期間が短くなったことによるものでした。

死亡率を下げたとは言えないけれど、複合評価では主に生命維持治療の期間に違いがあったんですね。

そう読むのが正確だね。それでも、患者さんにとって生命維持治療の期間が短くなることには大きな意味がある。そして、その方法の中心に、看護師が毎日測っているCRTがあることに注目したいんだ。
看護の目で読む:明日からのベッドサイドへ
この研究は、医師が輸液や昇圧薬をどう調整するかについての研究です。しかし、看護師にとっても大切なメッセージがあります。
1.CRTは「なんとなく」ではなく、方法をそろえて測る
CRTが治療の判断に使われるのであれば、その値の正確さは看護師の測り方にかかっています。
- どの指で測るか(毎回同じ場所)
- どれくらいの強さで、何秒押すか
- 部屋の明るさ(暗いと色の戻りが分かりにくい)
- 手が冷えていないか、発熱していないか
- 誰が測っても同じ値になるか
施設で測り方が決まっていない場合は、チームで方法をそろえることから始めるとよいかもしれません。
2.CRTは「流れ」で見る
1回のCRTだけで判断するのではなく、輸液や昇圧薬を調整した後に、CRTがどう変わったかを見ることが大切です。CRTは、治療への反応を短い時間で確かめられる指標でもあります。
3.ほかの窓と組み合わせる
CRTも、乳酸値や尿量と同じように、それだけで全てが分かる指標ではありません。
- 意識の変化(脳の窓)
- 皮膚の冷感・まだら模様・CRT(皮膚の窓)
- 尿量(腎臓の窓)
- 乳酸値
を合わせて、身体の中で何が起きているかを考えます。
この研究を読むときの注意点
- 対象は敗血症性ショックの初期の患者さんです。ほかのショックや、時間がたった後の患者さんにそのまま当てはまるとは限りません。
- CRTを目標にした群では、心エコーなど複数の評価を組み合わせて治療を調整していました。「CRTだけを見ればよい」という研究ではありません。
- 実際の治療方針は、各施設の医療チームが判断します。
まとめ
- CRTは、ベッドサイドで繰り返し測れる「皮膚の窓」の指標です。
- ANDROMEDA-SHOCK-2では、敗血症性ショックの初期にCRTを目標として治療を個別に調整する方法が、通常の治療より良い結果でした(主に生命維持治療の期間の短縮)。
- 看護師ができることは、CRTを同じ方法で正確に測り、変化を流れで捉え、ほかの窓と合わせて伝えることです。
「指先の色が戻るまで何秒か」。毎日している観察の一つひとつが、治療の判断を支えています。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※本記事は、論文の内容を学習目的で紹介するものです。個々の患者さんの評価や治療は、医療チームで判断してください。
参考文献
- ANDROMEDA-SHOCK-2 Investigators; Hernández G, Ospina-Tascón GA, Kattan E, et al. Personalized Hemodynamic Resuscitation Targeting Capillary Refill Time in Early Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK-2 Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025;334(22):1988–1999. https://doi.org/10.1001/jama.2025.20402
- Hernández G, Ospina-Tascón GA, Damiani LP, et al. Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(7):654–664. https://doi.org/10.1001/jama.2019.0071
- Hernández G, Carmona P, Ait-Oufella H. Monitoring capillary refill time in septic shock. Intensive Care Med. 2024;50(4):580–582. https://doi.org/10.1007/s00134-024-07361-3









