早期離床は、早く・たくさん行うほどよい?――TEAM試験から考える「今日の適量」

ICU(intensive care unit:集中治療室)の離床では、「今日は端座位まで」「次は立位へ」と目標を立てます。目標があると、チームで進めやすくなります。

一方で、目標を達成することが先に立ち、患者さんの疲れや負担を後回しにしていないでしょうか。今回はTEAM(Treatment of Mechanically Ventilated Adults with Early Activity and Mobilization)試験を入口に、離床の量を考えます。

※登場人物と会話は学習用のフィクションです。

新人看護師
新人看護師

早期離床が大切なら、できるだけ早く、長く動いてもらう方がよいと思っていました。でも、離床を増やしても結果がよくならなかった研究があると聞きました。離床そのものを控えた方がよいのでしょうか?

坂コー先生
坂コー先生

まず、何と何を比べた研究かを確認しよう。TEAM試験の対照群にも通常の離床が行われていたんだ。「離床あり」と「離床なし」の比較と読み替えると、研究から受け取る意味が変わってしまうよ。

TEAM試験は、通常ケアに離床を増やした研究

TEAM試験は、侵襲的人工呼吸管理を受ける成人750人を無作為に割り付けた、多施設研究です。鎮静の最小化と毎日の理学療法を含む早期の積極的離床と、各ICUで行う通常ケアを比較しました。[1]

主要評価項目は、180日までに生存して病院外で過ごした日数です。中央値は介入群143日、通常ケア群145日で、有意な差は示されませんでした。また、介入群では有害事象がより多く報告されました。[1]

この結果は、離床を増やせば、必ず患者さんにとってよい結果につながるとは限らないことを考える材料になります。

「早期離床は不要」とは結論づけない

対照群にも離床が行われていたことに加え、研究の対象や介入方法を忘れてはいけません。一つの介入で得られた結果を、すべてのリハビリテーションへ広げることはできません。

2025年PADIS(Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption:痛み・不穏/鎮静・せん妄・不動・睡眠障害) focused updateは、成人ICU患者に対し、通常ケアより強化した離床・リハビリテーションを条件付きで提案しています。一方、適切な頻度、強度、時間、提供方法は確立していないと説明しています。[2]

「強化した離床を考えること」と「全員に同じ量を増やすこと」は同じではありません。本記事では、TEAM試験と現行推奨を踏まえ、患者さんごとの目標と負担を合わせて考える視点を提案します。

新人看護師
新人看護師

研究の結果とガイドラインの推奨が違って見えて、戸惑います。一つの研究だけで決めるのではなく、ほかの研究も含めて考えるのですね。それでも、目の前の患者さんにはどうしたらよいのでしょう?

坂コー先生
坂コー先生

「今日何を目指すか」と同時に、「どんな変化があれば休むか、やめるか」を相談しておこう。昨日立てた人でも、今日は同じ負荷が合うとは限らない。目標だけでなく、反応を見ながら調整する考え方が必要なんだ。

看護師がつなぎたいのは、離床の前・中・後

離床の前には、その日の循環や呼吸、覚醒、痛み、ライン類の安全をチームで確認します。開始・中止の具体的な基準は、病態と施設のプロトコルに従います。

離床中は、数値だけでなく、表情、本人の息苦しさ、疲れの訴えも受け取ります。安全に進めるための人員や役割分担も必要です。

離床後には、休息でどのように回復したかを観察します。「立位ができた」だけでなく、「その後の呼吸や疲れはどうだったか」まで共有できると、次の計画へつながります。

これは、TEAM試験が特定の看護観察手順を証明したという意味ではありません。研究の問いを、普段のチームの対話へつなげるための提案です。

目標を下げることにも、判断がある

目標を達成できなかった日を、単純に「進まなかった日」と考えないようにしたいものです。

患者さんの反応を見て休息を選んだ。負担の原因を相談した。次に試す条件を整理した。こうした過程も、回復を支えるケアです。

反対に、負担を恐れて機会を失っていないかも振り返ります。「増やすか、やめるか」の二択より、何を、どの程度、どんな条件で行うかを話し合います。

新人看護師
新人看護師

記録には「端座位までできた」だけでなく、本人の訴えや休んだ後の回復も残してみます。できた段階を数えるだけでは、次の人が同じ量でよいか判断しづらいですね。

坂コー先生
坂コー先生

そうだね。早期離床の目標は、記録上の段階を進めることだけではない。患者さんにとって意味のある回復を目指し、今日の反応から明日の計画を考えていこう。

今日のひと工夫

離床の打ち合わせで、目標に加えて「休む・中止する条件」と「終了後に確かめること」を一つずつ共有してみてください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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参考文献

  1. The TEAM Study Investigators and the ANZICS Clinical Trials Group. Early Active Mobilization during Mechanical Ventilation in the ICU. N Engl J Med. 2022;387:1747–1758. 原著
  2. Lewis K, et al. PADIS focused update. Crit Care Med. 2025;53:e711–e727. SCCM公式推奨と注記