2026年10月、内容を更新しました。
集中治療室(Intensive Care Unit:ICU)では、痛み、鎮静、せん妄、人工呼吸、離床、家族への支援を、別々の仕事として進めてしまいやすい場面があります。けれど、一つを変えることが、ほかのケアの進めやすさにも関わります。
ABCDEFバンドルは、こうしたケアをチームでつなぐ枠組みです。文字を覚えるところから、患者さんの一日を組み立てるところへ進んでみましょう。

先生、ABCDEFバンドルは、毎日6項目を全部やらないといけないのですか? 今日は離床が難しそうな患者さんもいて、迷っています。

「全部やる」の言葉だけだと、そう感じるよね。毎日それぞれを検討することと、状態にかかわらず同じ介入を実施することは違うよ。適応と安全性を確かめて、今日はどこまでできるか、できない理由は何かをチームで共有するんだ。
※対話は学習用のフィクションです。
現在のABCDEFは、この6つ
米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine:SCCM)は、ICU Liberation Bundleとして次の6要素を示しています。[1] 英語の名称は公式の構成を示し、日本語と実践例は初学者向けに整理しました。
| 要素 | 英語・日本語 | ベッドサイドで考えることの例 |
|---|---|---|
| A | Assess, Prevent, and Manage Pain:痛みの評価・予防・管理 | 安静時だけでなく、処置や動くときの痛みも確かめる |
| B | Both Spontaneous Awakening Trials and Spontaneous Breathing Trials:自発覚醒トライアルと自発呼吸トライアルの両方 | それぞれの安全性と適応を確認し、覚醒と呼吸の評価を連携する |
| C | Choice of Analgesia and Sedation:鎮痛・鎮静の選択 | 痛みへの対応、鎮静目標、使用薬と反応を共有する |
| D | Delirium: Assess, Prevent, and Manage:せん妄の評価・予防・管理 | 評価できる状態かを確かめ、原因や環境を含めて対応する |
| E | Early Mobility and Exercise:早期離床・運動 | 患者さんの状態と目標に合う活動をチームで検討する |
| F | Family Engagement and Empowerment:家族の参加とエンパワメント | 家族が情報を得て、希望する形で参加できるよう支える |
旧記事では歴史的なABCDEの説明も長く載せていました。現在のABCDEFを学ぶときは、Aは痛み、Bは覚醒と呼吸の両方、Cは鎮痛・鎮静の選択と整理すると、混同を減らせます。[1]
バンドルは単なる頭文字の暗記ではありません。たとえば、痛みの評価と対応を行うことで活動を考えやすくなり、鎮静目標を共有することで患者さんの反応をチームで確かめやすくなります。ただし、このつながりの例は個々の患者さんで確認する必要があります。
Bは「鎮静を止めて、そのまま抜管」ではない
自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial:SAT)は、適応と安全性を確認して鎮静薬の中断などにより覚醒を評価する取り組みです。自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial:SBT)は、呼吸補助を減らした条件で自発呼吸を評価します。[1,2]
SATとSBTには、それぞれ事前の安全性確認と、中止・再開の判断が必要です。実施条件を満たさない日に、形式的に進めることはしません。具体的な条件は施設の手順と担当チームで確認します。
また、SBTに成功したことだけで抜管が決まるわけではありません。意識や気道防御、咳・分泌物なども含めた評価が必要です。Bは、患者さんを安全に評価できる機会を作るための連携と捉えます。

離床だけを先に進めようとしても、痛みや鎮静が合っていないと難しいのですね。家族への説明も、その日の目標と一緒に考えてよいのでしょうか?

うん。本人や家族が何を大事にしているかを聞くと、目標を考える手掛かりになるよ。ただ、家族が来られるか、何かを手伝えるかで支援の価値を決めないことも大切だね。参加の希望や負担に合わせて、説明や関わり方を整えよう。
PADISガイドラインとは、どうつながる?
2018年のPADISガイドラインは、痛み(Pain)、不穏・鎮静(Agitation/Sedation)、せん妄(Delirium)、不動(Immobility)、睡眠障害(Sleep Disruption)を扱います。ABCDEFは、これらの重要な要素を日々のケアへ実装する枠組みです。[1,2]
2025年には、不安も検討対象に含めた重点更新が公表されました。2018年の全項目を一から置き換えた改訂ではありません。[3]
| 2025年重点更新で押さえたい点 | バンドルを考えるときの読み方 |
|---|---|
| 人工呼吸中の成人で、浅い鎮静やせん妄の減少が最優先なら、プロポフォールよりデクスメデトミジンを条件付きで提案 | Cを特定の薬の一律使用と捉えず、目標と患者さんの条件を確認する |
| 通常ケアより強化した離床・リハビリテーションを条件付きで提案 | Eは早ければ早いほど、量が多いほどよいとは限らない。最適な頻度・強度・期間は未確立 |
| 成人ICU患者へのメラトニンを条件付きで提案 | 睡眠への対応も見落とさない。全員への定型投与や用量の指示とは分ける |
| せん妄治療の抗精神病薬は、使用を支持・反対する推奨を出せない | Dを薬剤の有無だけで完結させない |
| 不安へのベンゾジアゼピンは、推奨を出すには根拠が不十分 | 不安への対応と鎮静の必要性を、同じ判断にしない |
これらは処方を決めるための指示ではありません。患者さんの状態、国内の適応、施設の方針を担当チームで確認します。詳しくはPADISガイドラインの記事へつなげて読んでください。
Fについては、2025年公表の家族中心ケア指針「2024」でも、家族の面会・参加やコミュニケーション、心理的なニーズへの支援が扱われています。[4] 家族をケアの人手として数えるのでなく、支援を必要とする人としても捉えます。
効果はある?――「関連」と「必ず起きる効果」を分けて読む
2019年のPunらの研究は、68のICU、成人15,226人を対象とした多施設前向きコホート研究です。その日に適応のあるバンドル要素を実施できていることは、死亡や翌日の人工呼吸、せん妄などが少ないことと関連していました。[5]
ただし、これは患者さんを無作為に割り付けた試験ではありません。状態が安定しているためにケアを実施しやすいことや、施設体制などの影響を、調整しても完全には取り除けません。「実施すれば、その患者さんの死亡リスクが必ず何%下がる」とは説明できません。
旧記事の遵守率と生存に関する数字を、そのまま一般的な効果量として覚えるより、適応のあるケアをどれだけつなげられたか、患者さんに何が起きたかを確かめる視点を持ちたいところです。
申し送りでは「できた・できない」の先まで共有する
次の表は、原著のチェックリストの転載ではなく、本記事で作成した申し送り例です。実際の患者さんの記録ではありません。
| 視点 | 共有する内容の例 |
|---|---|
| A・C | 動くときに痛みがある。対応後の反応と、今日の鎮静目標を確認する |
| B | SAT・SBTそれぞれの適応、安全性、実施結果や見送った理由を共有する |
| D | 評価結果、評価不能だった条件、急な変化、睡眠や環境の情報を残す |
| E | 今日できた動作と介助量、疲労や症状、次に再評価する条件を共有する |
| F | 本人・家族の希望、説明後に残った疑問、次に話す担当や機会を共有する |

今日は実施しなかった項目も、理由や再評価の予定を共有すればよいのですね。項目を埋めることより、その人の目標につながっているかを考えたいです。

そうだね。できたことも、難しかったことも、次のケアに生かせる情報だよ。AからFを見渡して「今日の目標と、次に確かめること」をそろえる。そこから始めてみよう。
関連する勉強ノート
参考文献・資料
- SCCM. ICU Liberation Bundle(A-F)公式ページ.
- Devlin JW, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46:e825–e873. SCCM公開の日本語訳PDF
- SCCM. 2025年PADIS重点更新・推奨一覧.
- Hwang DY, et al. Society of Critical Care Medicine Guidelines on Family-Centered Care for Adult ICUs: 2024. Crit Care Med. 2025;53:e465–e482. 公式推奨一覧
- Pun BT, et al. Caring for Critically Ill Patients With the ABCDEF Bundle: Results of the ICU Liberation Collaborative in Over 15,000 Adults. Crit Care Med. 2019;47:3–14. 原著本文










