ICUの患者さんが「外に出たい」と言ったら?――庭で過ごす時間から考える看護

「少しでいいから、外の空気を吸いたい」。

ICU(intensive care unit:集中治療室)で、そのような希望を聞いたら、何を考えるでしょうか。呼吸や循環の状態、移動の方法、必要なスタッフ。確認することが次々に浮かぶかもしれません。

今回は、英国のICUで庭をケアに活用した2症例の報告を読みます。外へ出ることの効果を急いで決めず、その時間が患者さんと家族にとって何を意味するかを考えてみましょう。[1]

※冒頭の「外に出たい」という希望、登場人物と会話、後半の相談例は学習用のフィクションです。原著の2例は、この言葉をきっかけにした事例として報告されたものではありません。

新人看護師
新人看護師

患者さんから「外に出たい」と言われました。かなえてあげたい気持ちはあります。でも、ICUから出るのは心配です。まず、安全に移動できるかを考えればよいでしょうか?

坂コー先生
坂コー先生

大切な確認だね。それと一緒に、「外で何をしたいのか」も聞いてみたい。空を見たいのか、家族と過ごしたいのか。その人の希望を具体的にすると、チームで相談する目的もはっきりするよ。

紹介するのは、庭を使った二つのケア

Tantamらが紹介したのは、ICUの庭と、その庭に隣接する部屋を使ったケアです。医療ガスや電源、モニタリングなどを利用できるよう整えられた場所で、一般の庭へそのまま移動した報告ではありません。[1]

一つ目は終末期ケアの事例です。治療方針に沿って人工呼吸を終了し抜管したあと、患者さんは庭で約4時間を過ごし、家族に見守られて亡くなりました。看護師は必要な支援を行いながら、家族のプライバシーに配慮した距離で見守っています。家族2人への面接と看護師の振り返りから、その時間の意味が検討されました。ここで把握されたのは家族・看護師の受け止めで、患者本人の感想を直接聴取した結果ではありません。[1]

二つ目は、くも膜下出血後に気管切開やリハビリテーションを要し、せん妄と多剤耐性菌への感染対策も課題となっていた患者さんの事例です。庭と隣接室を約3か月にわたりケアに活用しました。使用を1日の終わりにして終了後に清掃し、移動には気道管理に習熟したスタッフを追加するなど、患者さんの状況に合わせて準備していました。[1]

「庭に出たから、よくなった」と言える?

ここは、論文を読むうえで立ち止まりたいところです。

著者らは、2例での実施可能性と安全性、2例目での気分やせん妄などの改善を報告しています。一方、比較群はなく、複数のケアが重なっています。2例目では患者・家族・スタッフの正式な書面によるフィードバックも収集していません。[1]

その場でよい変化が観察されたことと、外気浴の効果や広い対象への安全性が証明されたことは、分けて読みます。[1]

そのうえで、この報告から持ち帰れる問いがあります。「どんな場所で過ごすか」をケアの選択肢に加えると、患者さんや家族にどのような時間を届けられるでしょうか。環境を変える意義と、それを支える準備を一緒に考えたいところです。

新人看護師
新人看護師

せん妄の点数が下がったかだけで評価すると、家族と静かに過ごせたことや、本人の希望に近づけたことを見落としてしまいそうですね。でも、よい体験があったことと、治療効果が証明されたことは分けるのですね。

坂コー先生
坂コー先生

そうだね。研究の限界を押さえたうえで、「自分たちは何を大切にしたいか」を考えるんだ。実際に移動できるかは、その時の状態や設備を踏まえてチームで判断する。希望を聞くことと、実施を約束することも分けておこう。

看護へつなげる三つの問い

ここからは、ケアの場所をチームで相談するための、本記事からの提案です。

1.「外に出たい」の、その先を聞く

「外で、どんなふうに過ごせたらうれしいですか」。

質問を少し具体的にしてみます。風に触れたい人もいれば、季節を感じたい人、家族といつもに近い時間を過ごしたい人もいるでしょう。こちらが「きっと気分転換になる」と決めつける前に、本人の言葉を聞きたいところです。

本人から聞くことが難しい場合は、家族の話を手掛かりにできます。その場合も、「家族が推測した希望」と「本人が今、示している反応」を分けて捉えます。

2.希望を、チームが相談できる言葉にする

架空の相談例です。

ご本人は「外で家族と空を見たい」と話されています。外へ出られるかはまだ判断できていません。現在の状態、必要な機器と人員、移動先の環境を含めて、実現できる方法があるか相談したいです。

移動そのものを目標にせず、何のための時間なのかを伝えます。呼吸・循環、気道やライン、感染対策、天候、移動経路、状態が変化した際の対応などは、施設の手順と担当チームの判断に沿って確認します。

3.実施後は、本人がどう過ごしたかを残す

もし実施できたら、「外気浴を実施」で記録を終えず、本人が何を話し、どのような反応を示したかも残してみます。

喜ぶはずと思っていたのに、疲れや不安が強くなることもあるかもしれません。家族が望むことと本人の心地よさが一致しているかも、確かめたい点です。よかったことと負担になったことの両方が、次のケアを考える材料になります。

外に出られない日にも、希望を聞いた意味は残る

設備や患者さんの状態によって、外へ出ることが難しい場合もあります。

そのときは、なぜ難しいかを説明し、本人が望む時間に近づける方法があるかを相談します。家族と過ごす場所や時間を調整する、見える景色について話すなど、その人の希望から考え直せることがあるかもしれません。その人が望んだ時間に、今の場所でどこまで近づけるかを考えてみます。

新人看護師
新人看護師

「外に出られるか」だけで相談が終わるところでした。まず何をしたいのかを聞き、実施できたらその人がどう過ごしたかを確かめる。難しい場合も、聞いた希望を次のケアにつなげたいです。

坂コー先生
坂コー先生

うん。庭のあるICUだけの話として閉じなくてよいと思うよ。「今、この人はどんな時間を過ごしたいのか」。その問いは、自分たちのベッドサイドにも持ち帰れるね。

今日のひと工夫

ケアを行う場所について、「その人が望む過ごし方」「場所を変えることで期待すること」「実現に必要なチームの準備」を一つずつ言葉にしてみてください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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参考文献

  1. Tantam K, Wolstenholme S, Scott J, Fewings J, Conquest G. Case Series: Episodes of Care in an Intensive Care Garden—Does Fresh Air Matter? Nurs Crit Care. 2026;31(4):e70508. 原著